国際マングローブ生態系協会のプロジェクト
現在のプロジェクトの一部紹介
-開発されたマングローブ林の再生・生物多様性の保全-
マレーシアには57.7万haのマングローブ林があるとされていますが、その半分以上はボルネオ島のサバ州に分布しています。世界的に見ても生物多様性に富んでいるボルネオ島ですが、沿岸開発やオイルパーム農園への転換などにより、マングローブ林の荒廃地が広がっています。
ISMEはサバ州森林局と共同で、劣化あるいは違法に伐採されたマングローブ林の再生を目的として、サバ州でのマングローブ植林事業を行っています。2011年から開始され、これまで、約360haの荒廃地や泥干潟に13種類のマングローブを植林しました。
単なるマングローブ林の再生だけでなく、適切な植林技術の確立のための調査研究や技術の普及、生物多様性保全のための環境教育活動も同時に進めています。
寄付:東京海上日動火災保険株式会社
(東京海上日動火災保険株式会社 Mangrove World)
関連する書籍:The Rehabilitaion of Mangroves in Sabah The SFD-ISME Collaboration (2011-2014)
関連する書籍:The Rehabilitaion of Mangroves in Sabah The SFD-ISME Collaboration (2014-2019)
-海岸侵食の緩和・雇用機会の提供・生物多様性の保全-
インドの西海岸に位置するグジャラート州カンバット湾には、時に潮汐が8mを超え、乾くと土壌表面に塩が析出するような、生き物にとって厳しい環境の広大な泥干潟です。
潮汐が時に8mなので、一部では海岸侵食も進んでいます。海岸侵食の軽減と乾季の家畜への飼料提供を主な目的とし、インド・マングローブ協会や現地NGOと協力し、2009年から植林事業を始めました。
マングローブ植林を行うことで、農地への高潮被害を防ぐだけでなく、生物多様性保全へ貢献することや、家畜への安価な飼料を提供することで、住民生活の向上に結びつけたいと考えています。また、植林活動には住民の協力が欠かせませんが、雇用機会の少ない女性たちに雇用機会を提供するなど、貧困の問題解決にも努めています。
プロジェクトを始めたときは、草木一本も生えていなかった泥干潟に少しずつマングローブが育ち、カニや魚、鳥がやってくるようになりました。
寄付:東京海上日動火災保険株式会社
(東京海上日動火災保険株式会社 Mangrove World)
-海岸侵食の緩和を目指す-
南太平洋に位置するキリバス共和国は、海面上昇によって国土が水没してしまうかもしれない深刻な問題に直面しています。ISMEはキリバスで、地域の人々と協働で海岸侵食の緩和を目指したマングローブの植林活動を行っています。
将来的に、地域の人々が自らの手でマングローブ植林が行えるよう、関係機関(環境・国土・農業開発省)への植林の技術指導や、子供たちと植林を行う事で環境教育の普及にも努めています。このプロジェクトは、キリバスのアノテ・トン前大統領の強いご指示を受けるだけでなく、2010年にキリバスを来訪した国連のパン・ギムン事務総長は、同国での植林活動を賞賛され、事務総長自らマングローブの植林を行いました。
プロジェクト開始から10年以上となり、子供たちと共に植えたマングローブは種をつけるようになりました。今後、さら大きく育ち、土壌の堆積を促進したり、海岸侵食を緩和したり、津波や高波の影響を減らしてくれたりしたらと思っています。
助成:コスモ石油エコカード基金
(コスモ石油エコカード基金活動紹介)
ISMEは国立環境研究所(NIES)とマングローブ生態系に関する研究を推進するために連携し、世界のマングローブの分布図およびマングローブの構成植物種リストを『熱帯・亜熱帯沿岸生態系データベース: Tropical Coastal Ecosystems Portal (TroCEP)』http://www.nies.go.jp/TroCEP/index.htmlとして公開してます。
TroCEPでは、国や地域毎のマングローブの分布情報や分布図を提供しています。将来的にはマングローブだけでなく、サンゴや海草などの分布情報の収集・公開にも取り組み、熱帯・亜熱帯域の沿岸生態系の理解と保全の推進を目指しています。
連携・協力:国立環境研究所
(TroCEP プレスリリース(2015年7月))
ISMEでは2008年から朝日新聞社主催、東京海上日動火災保険株式会社共催の「こども環境大賞・西表島エコ体験ツアー」の実施に協力をしています。こども環境大賞で受賞した子供たちを沖縄県西表島に招待し、マングローブ林の中でのカヌーやビーチクリーニング、マングローブ染め、マングローブ植林体験など様々な活動を通して、西表島のマングローブや生き物たち、そしてそれらの自然が直面する問題について学ぶ機会を提供しています。西表島での経験を将来大人になって、環境保全活動に結びつけて欲しいものだと思っています。
関連:こども環境大賞
(東京海上日動火災保険株式会社 こども環境大賞)
-Global Mangrove Database and Information System (GLOMIS)-
GLOMISはマングローブに関する文献などの情報をオンラインのデータベースから検索できるシステムです。マングローブに関連する情報を簡単に検索できるツールとして、公開・運営してきました。現在は8400件以上の文献に関するデータが検索可能です。
また、GLOMISの電子ジャーナル"ISME/GLOMIS Electronic Journal"は科学的な研究成果やマングローブ生態系に関わる諸問題などの情報をお伝えする査読済みのオンラインジャーナルです。ホームページからダウンロードでき、ISME会員なら誰でも投稿することができます。
過去のプロジェクトの一部紹介
-人材育成研修の実施-
国際協力機構(JICA)の委託を受け、2つの集団研修を実施してきました。講義や実習、視察、アクションプランの作成などを通して、マングローブ生態系を含めた沿岸生態系の管理や環境教育の普及のための国際的な人材育成に努めてきました。残念ながらJICAが方針を変更したため、それらは2013年から廃止となってしまいました。JICAだけでなく、もし要望があれば、これからもできる限り、技術的な支援を継続したいと思っています。
「マングローブ生態系の持続可能な管理と保全」
(1995年~2012年)修了した研修員38ヵ国117人
「持続可能な開発のための環境教育-沿岸生態系と住民生活の保全-」
(2005年~2012年)修了した研修員28ヵ国84人
委託:JICA(国際協力機構)
-海岸線の保全-
モルディブ共和国は、海面上昇の脅威にさらされている1990の小さな島から成り立っています。 モルディブ共和国の住宅環境自治省のサポートで、ISMEはいくつかの小島にマングローブの管理と植林を行いました。 このプロジェクトは、モルジブの関連当局と地方共同体のサポートと参加によって実施されました。
助成:Japan Fund for Global Environment(地球環境基金)
-荒廃したマングローブ林の再生および環境教育事業-
ブラジル北部に位置するPara州、Brangançaでは道路建設の影響により、大規模なマングローブ林が荒廃しましたが、ISMEではJICAの委託を受け、これらのマングローブ林の再生とマングローブの重要性について住民の意識向上のための環境教育活動を行いました。Brangançaの地域住民とFederal University of Para のBrangançaキャンパス、Museu Emilio Goeldi, and Mangrove Dynamics and Management(MADAM)の協力のもと、プロジェクトは実施されました。
委託:JICA(国際協力機構)
ISMEは2022年度より、公益信託 商船三井モーリシャス自然環境回復保全・国際協力基金の初年度助成対象プロジェクトとして、「生態系保全・再生と持続可能な利活用への技術支援と人材育成」と題した新規プロジェクトを開始いたします。現地NGO等の方々と共同でマングローブ調査活動等を行う事により、モーリシャスのマングローブ生態系の保全・再生と持続可能な利活用を、現地の方々が自らが行える人材を育成することを最終的に目指しており、微力ではありますが、それらに多少なりとも貢献させて頂きたいと思っています。
公益信託 商船三井モーリシャス自然環境回復保全・国際協力基金
(商船三井モーリシャス自然環境回復保全・国際協力基金)